「おはなし会」はこうする

NPOからだフシギの「からだ先生研修会」に参加された“からだ先生”が、300名を超えました。

各地で、たくさんの“からだ先生”が活躍されています。これから始める方、経験はあるけどもう少し詳細を知りたい方へ、おはなし会の実際についてお伝えしたいと思います。

第2版 更新日:2023年12月11日

 

1.基本教材は「わたしのからだ」です

NPOからだフシギで作成した「わたしのからだ」は、8テーマに分けた体のお話で、絵本紙芝居があります。 絵本は12ページ、紙芝居は8枚です。8つのテーマは以下のとおりです。

・たべたもののとおりみち―消化器系―
・かんぞうとすいぞう―肝臓と膵臓―
・すってはいて―呼吸器系―
・ちとしんぞう―循環器系―
・おしっこのはなし―泌尿器系―
・ほねときんにく―運動器系―
・のうとしんけい―神経系―
・おとこのこおんなのこ―生殖器系―
2.子どもに伝えたいこと

 体の話を子どもに伝える大事な目的は「体はすごい」、「よくできている」、「おもしろい」、「このすごい体を自分は持っている・みんなも持っている、大事にしよう」、という気持ちを育むことです。

子どもはもちろん臓器の名前や働きを覚えていきます。大変に理解力があります。でも臓器の名前や働きを勉強するのが第一の目的ではありません。中が見えない自分の体を、こんなふうになっているんだと実感できたらいいと思っています。

この絵本の内容を土台に、子どもたちは大きくなるに従って、さらに体の知識を身につけていくでしょう。人はいろいろな部分や臓器からできています。まず体全体を知ってほしいので、8系統を全部読んであげてください。

子どもたちに話をする話し手も、絵本の内容に、一緒にすごいと思ってください。知らなかったことがあったら、知らなかったなあと、伝えてください。子どもが質問してきたら、よく気がついたねと応え、一緒に調べてみてください。絵本にセットされている大人向けの解説本は役に立つと思いますので、ぜひ活用いただきたいと思っています。
3.お話のやり方は自由です

絵本も紙芝居も、ひとつの読み聞かせは、5分あればできます。子どもたちの反応によって、また問いかけを入れて、時間をかけるのも自由です。大事なことは、子どもたちが楽しめること、わかること、そのために集中できることです。

普段の生活の中で、子どもたちの様子を見て、隙間の時間に読み聞かせるのは、とてもいいと思います。保育園や幼稚園、子ども園などならば、給食(お弁当)の前でも、帰りの会の時でも、いつでもできると思います。短い時間でも、テーマに沿った手遊びで集中を図ってから、読み聞かせるのも良いでしょう。

絵本は小さいので、大人数に話すには適切ではありません。人数が多い時は紙芝居を使ってください。

家庭では、子どもの興味に応じて、いつでも何度でも繰り返してください。絵本は、濡れてもダメにならない石からできた素材を使っていますので、濡れても安心です。子どもを膝に抱いて、一緒に絵本を読んでみてください。
4.おはなし会の計画

1)おはなし会の前に準備すること

おはなし会を開催する時には、紙芝居だけでなく、テーマにあった遊び(体験)を組み合わせることを、おすすめします。

おはなし会をするためには、次のことを計画します。

会場(どこでするのか):
保育所・保育園の教室、図書館、その他、どこでもできます。
お話を聞く時の子どもたちは、椅子に座る、床に座るか、どちらでもできます。椅子に座った方が緊張感は高まります。

参加者(誰に参加してもらうのか):
子どもだけにするのか、親子で参加するものにするのか、あるいは兄弟姉妹も参加するものにするのかを決めます。それぞれの良さがあります。

参加者の人数(「からだ先生」が2名で実施する場合):
●子どもだけなら10~20名程度が集中できる人数です。
●親子参加の場合は10組程度です。
*10組を超える場合は、「からだ先生」のほかに協力してくださる方が1~2名いらした方がやりやすいです。

開催時間:
おはなし会全体で、20~30分が目安ですが、子どもたちの反応がたくさんあると、40分位があっという間に過ぎることもあります。
会をするのは、子どもが元気で集中しやすい午前中の方がいいようです。

紙芝居のテーマ、手遊び:こちらについては、別項で説明します。

NPOからだフシギでは、紙芝居のほかに、以下の教材を開発しています。
・「からだフシギ」の歌
・「からだフシギ」のダンス
・からだTシャツ
歌とダンスはYouTubeで公開しています。 踊り方を教えてくれるバージョンも公開しています。 からだTシャツは、NPOで販売しています。レンタルもできます。

2)おはなし会のプログラム

一つのテーマで、子どもの集中が続く20分程度を目安にプログラムを作りましょう。
おはなし会の基本的プログラムは この(下の?)3つです。会の始まりと終わりに、からだフシギの歌を使うことや遊びでダンスを覚えるのも楽しいです。

  ①集中のために→手遊び
  ②読み聞かせ→紙芝居
  ③遊び→体験しよう
5.テーマの選び方は自由です

8テーマの話の順番は決まっていません。年間で8テーマのからだの話をするならば、季節の行事や子どもたちの体の様子を見て、予定できるのではないでしょうか。その組み合わせの例を以下にお示しします。
順番を考えるヒント テーマ
運動会の季節に

ほねときんにく、

のうとしんけい

プール遊びの季節に おとこのこ おんなのこ
冬の寒さや風邪の季節に すってはいて

最初のお話に

※子どもたちはうんち・おしっこが大好き。

 普段から見ているものなので、分かりやす

 いです。

たべたもののとおりみち

おしっこのはなし

いつでもOK

※心臓は見えないのですが、大抵の子どもは

 知っています

ちとしんぞう

「ほねときんにく」「たべもののとおりみち」

が終わってから

※他にくらべると、少し難しいです

かんぞう 
6.手遊びの例

保育関係者の方はよくご存知と思いますが、参考までにこんな手遊びを使っています。手遊びについては、身近に保育関係者がいらしたら相談してみてください。また保育関係の書棚やYouTubeを見ていただくと色々ありますので、ご参照ください。
手遊びは、大人が恥ずかしがらずにどんどん歌うのが、ポイントです。

子どもたちが紙芝居に集中

できるように、最後が静か

になる手遊びの例です。

どのテーマにも使えます。

♪おおきなたいこ・ちいさなたいこ

♪さかながはねて

♪とんとん とんとん ひげじいさん

♪いっぽんばし いっぽんばし

♪はじまるよ

例えば「たべもののとおりみち」には、♪おべんとうばこのうた、「すってはいて」には、♪ごんべえさんの赤ちゃんが、よくあいます。子ども同士もからだ先生も初対面で、子どもが少ない時には、♪あなたのおなまえは?は、一体感も生まれます。

7.体験しようの例

テーマ別に、体験しようの例をいくつかお示しします。
テーマ 体験しよう
ほねときんにく

①頭の固いところクイズ

 体の固いところはどこかを問いかけて、子どもの

 答えがあったら、その骨の中に何があるか、ある

 いは何をしている骨かを一緒に考えます。

 

 〇あたま:頭の骨の中には脳がある

 〇背骨:背骨の中には脊髄がある、

     背中を伸ばして立っていられる

 〇肋骨:背から胸に細い骨が籠のようになってい

     る、中には肺と心臓がある

 〇腸骨:腸を支えているよ

 〇足や手の骨:歩くのにも、御飯食べるのにも

        使っているね、筋肉と一緒に働い

        ている、など

 

②タペストリーわたしの骨(市販のもの)

 タペストリーを使って、骨の形や位置、名前を

   見せ、その後子ども一人一人に、骨ひとつずつ

 を手にとってもらい、皆で組み立て直します。

 

③ 筋肉Tシャツ(市販のもの)

 筋肉Tシャツを着て、力こぶの筋肉、走るときの

 筋肉など示して、子ども自身の筋肉を確かめま 

 す。

のうとしんけい

①お豆腐落下実験

 脳はお豆腐のように柔らかいので、お豆腐のよう

 に水と骨に守られているという話しから、タッ

 パーを骨、水を脳脊髄液、豆腐を脳に見立てま

 す。

 水が入っている豆腐と水のない豆腐では、振った

 とき(落としたとき)、崩れ方に差があります。

 水があっても強く振ると豆腐が壊れます。

 水と骨が脳を守っていること、水があっても強く

 振ったり叩いたりすると、脳が傷つくことが納得

 できる体験です。

  (必要物品:タッパー2個、絹ごし豆腐1丁)

 

②離れていても伝わる実験(糸電話)

 神経が糸のような線維を通して次々と情報を伝え

 ていくのを、糸電話で表している話があります。

 それを試してみる体験です。糸をピンと張ると、

 離れていても伝わることを楽しみます。

 (必要物品:紙コップ、糸)

すって はいて

①大きな息をしてみよう

 両手をお腹にあてて、大きな息をする。息を吸っ

 たとき、お腹がふくらんだかな? 

 お腹を引っ込めながら息を吐いてみよう。

おしっこのはなし 

①おしっこの色

 ペットボトルで、濃いお茶の色と薄い色を準備し

   て汗を一杯かいた日のおしっこの色と水をたくさ

   ん飲んだ後のおしっこの色の違いをみせます。

 

②牛乳パック

 牛乳パック(子ども達に500cc、1リットルなどの

   量が分かり易いもの)をみせて、おしっこの量を

   イメージします。

ちとしんぞう

①聴診器で心臓の音を聞く

 おもちゃの聴診器では心臓の音はなかなか聞こえ

  ません。これは本物の聴診器がいいです。

 聴診器の使い方を教えて、子ども同士で胸の音を

 聞き合います。親子参加の時は、親子で互いに聞

   いてもらいますと、驚きと喜びが静かに広がるの

   がよくわかります。

 生きている証の心臓のドクドクという音を是非聞

   かせたいと思います。 

 (必要物品:聴診器)

 ※聴診器がない場合、胸に耳を当てても聞こえま

  す。

 

②脈に触れる

 手の裏側の親指の付け根、またはくるぶし高さの

 足の甲の中央で、自分の脈に触れてみます。

 これも心臓が動いている証拠です。

 探すのが難しいときは、大人が一緒に探してあげ

 ましょう。

 利き手の人差し指、中指、薬指の3本を揃えます。

 反対の手は掌を上に向けて、少し甲の方に曲げま  

 す。

 3本の指を腕の親指の付け根に当てます。

 

③太鼓でとんとんとん

 はじめに、1秒に1回のリズムで太鼓を鳴らしま

   す。

(心臓が1分間に60回収収縮する場合のリズムで

 す)

 次に、走ってみます。

 走ってから、今度はもっと早いリズムで太鼓を

   叩きます。動くと心臓が速く打つことがわかり

    ます。

 大人が実際に脈拍をとりながら、そのリズムで

   太鼓を鳴らすと、もっと面白いでしょう。

8.おはなし会の実際の例

人数:「からだ先生※」2名と幼稚園の先生2名。
    子ども 20名。
※「からだ先生」とは当NPOが開催する研修会を受講された方の
     名称です。
時間:幼稚園で午前中10時30分から11時まで
   プログラムは25分くらいで終わるように計画
場所:子どもたちの部屋で、椅子に座ってやる。
テーマ:食べたものの通り道。
紙芝居:からだ先生1名が実施。
からだTシャツでの体験:全員が触れられるように、20名を3グループに分けて7人程度で1体を使う。 Tシャツを着る人は、幼稚園の先生2名とからだ先生1名。

おはなし会の流れ(テーマ:たべたもののとおりみち)

   時間 内容 備考

からだフシギ

の歌

2分 

からだフシギのテーマソングを

かけることで、体のおはなし会

だとわかってもらいます。

 

手遊び

2-3分

初めて会う子どもたちの場合は

からだ先生の自己紹介も大事で

す。

お話の前に、子どもたちに集中

してもらいます。これには手遊

びが有効です。テーマに合わせ

たものを選んでください。

このテーマでは、“おべんとうば

こ”が似合います。

手遊びで集中でき

たらそのまま紙芝

居に移ります。

人が変わると子ど

もの集中が途切れ

ます。

紙芝居

3-5分

「たべたもののとおりみち」の

読み聞かせ

 

体験しよう

10分

からだTシャツを使って食べ物の

通り道(食道、胃、小腸、大腸)を

復習します。その他の肺、心臓、

肝臓なども、子ども達と確認しま

す。

そのあと3つに分かれて、Tシャ

ツや臓器に触って遊びます。

小腸を取り外して、長さが3人分

を試すのもいいでしょう。

からだTシャツ

質問タイム

18分

子どもたちに「質問がある人いま

すか」と問いかけます。

答えられる質問には答えます。

答えられない場合は「本当だね、

不思議だね、でもそれはからだ

先生も知らないな」と返してあげ

てください。答えなければいけな

いのではなく、子どもの疑問を一

緒に不思議がることが大事です。

子ども達の疑問には、絵本セット

の解説本が参考になるかもしれま

せん。

質問タイムでも、

何でも話そうタ

イムでも、また

これらを組み合

わせるのでも、

自由です。

子どもたちが、

からだに関心を

もつことを大事

にします。

何でも話そう

タイム

子どもたちに「お話聞いてどうだ

った?」「わかったことや感想を

教えて」「体のことでみんなが知

っていることを教えて」など、

その日の話をきっかけに、子ども

たちの発言を引き出す時間にします。

からだフシギの

歌と踊り

 

2分    
9.「みんな違ってみんないい」のメッセージを子ども達へ伝えてください

からだ先生研修会でよくいただく質問に、アレルギーのある子どももいるので何でも食べようというメッセージは出せない、病気がある子どもなど絵本の通りではない場合はどうしたらいいか、というものがあります。

「わたしのからだ」の絵本は、土台の土台といっていい基本事項だけで作ってあり、様々な違いについては、述べていません。一番多い例が載っていると考えていただき、違う例もたくさんある事を、読み聞かせの中で、あるいは終わった後に、子ども達に気付かせてあげて欲しいと思っています。その時、金子みすゞの詩にある『みんな違ってみんないい』の心を伝えていただけたら嬉しいです。

例えばアレルギーのある子どもの場合、「色んなものを好き嫌いせずに食べようね。でも食べたものが栄養にならなくて、具合が悪くなく場合は、食べたらダメだよね。自分でも、お友達にも気をつけて、食べないようにしてください。」とお話を追加してください。

あるエピソードをお伝えしたいと思います。おはなし会に来た男の子が、始まる前に麻痺がある仲間の前に来てじっと見て「変なの。」と言いました。「ほねときんにく」や「のうとしんけい」の紙芝居の後に、またその子がやってきて「筋肉がないの?」と聞きました。「筋肉はあるよ。」「じゃあ、神経がつながってないの?」「その通りだよ、よくわかったね。神経がつながってないから筋肉が動かないの。でもそれを変、て言われたら悲しいよ。」とその仲間は伝えました。子どもの理解力と仲間の対応力に感動しました。ここでも『みんな違ってみんないい』が広がったと思います。

 私と小鳥と鈴と (金子みすゞ作)

私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、

飛べる小鳥は私のように、地面(じべた)を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、

あの鳴る鈴は私のやうに、たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、

みんなちがって、みんないい。

10.おとこのこ・おんなのこ-性教育へのつながり

もう一つからだ先生研修会で、「おとこのこ・おんなのこ」は読みにくい、片親の子どもがいると話しづらいがどうすればいいかという質問を、よくいただきます。

まず、生殖器には子宮や精巣、卵巣などがありますが、これらも心臓と同じように体にとって大事な臓器の一つです。体全部を知る意味から、「おとこのこ・おんなのこ」も他と同じに扱って欲しいということが1点です。

5−6歳の子どもですと、親や兄弟姉妹とお風呂に入る機会があります。そうすれば体の違いが見えます。違いを知っているわけですから、その違いと意味を教えましょう。

「おとこのこ・おんなのこ」の絵本では、精子と卵子から子どもが生まれるという、生物学的は基本を説明しています。主人公ののりちゃんのお母さん、お父さんについては、お父さん・お母さんを使っていますが、他のところでは男の人・女の人という言葉にしています。子ども達の家庭に、お父さん、お母さんがいなくても、子どもが生まれるときには、精子(男の人の赤ちゃんのもと)と卵子(女の人の赤ちゃんのもと)が必要なことは同じです。この原理を伝えましょう。(精子の提供者がお父さんとは限らないし、卵子の提供者がお母さんとは限らないということを話し手が知っていれば、対応できると思っています。)

現在日本では、女子の月経が始まる頃に、性教育がなされていますが、特別な話と受け止めとられがちです。この絵本の内容を知っていたら、その上に積み重ねることができます。性だけを取り上げるのではなく、体全部を知っていて性を知るという考え方に、社会が変わることを願っています。

もうひとつ、LGBTQについてです。Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別と異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング、自らの性のあり方がわからない人等)の頭文字からLGBTQと言われていますが、子ども達にも、おとこのこ、おんなのこに分けられるのに違和感がある、服装の好みが周囲が思っている性別と違うなどの話は聞かれます。もともと男性と女性は、遺伝子の違いとホルモンの違いから生殖器と脳が作られているといわれています。男と女が対極にいるのではなく、連続線上にいると考えた方がいいのです。したがってLGBTQは体の仕組みから見れば当然の現象です。子ども達がいつから性を自認するのかは分かりませんが、このことも念頭に置き、『みんなちがってみんないい』を伝えて欲しいと思います。
11.教材のお求めは

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